≡ヴァニティケース≡

────ダメよ! もっとしっかりしなきゃ────


 感情の起伏が激しいのは女の性分だ。朝、目覚めた時から布団に入るまでの間にも気分は二転、三転する。まったくの話、額に目盛式のダイヤルとオン・オフのスイッチが有ればいい。それなら容易にコントロールが効く筈だ。しかし、それでもスイッチを操作するのが女自身である限り、根本的な解決にはならないだろうが……。


 美鈴は注意深く辺りを見回してみた。そこに不審者は居ないか。居たとしたらどう対処しようか。すると電信柱の陰に見え隠れしているパーカー男の姿を見付けた。彼は一体、誰の命を受けているのだろう。毎日毎日、なんて仕事熱心なのかと、つい感激してしまう美鈴がいた。


────良かった、彼だ。これで安心して帰れるわ────



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