≡ヴァニティケース≡
「んんん! んんん!」
「観念しろ! 人の命がカネで買えることなんて解り切ったことだろっ。だいいちお前ら貧乏人が生きていてなんになる。クズはせめて金持ちの邪魔にならないように、ひっそりと暮らしていれば良かったんだ!」
男は髪を掻きむしりながら目を剥き、美鈴を怒鳴り付ける。すると突然、若い女の声が聞こえてきた。
「なあ、やかましいことあらへんか?」
「ああ、お嬢様! 大変お待たせ致しました。これです」
────なに? 女? どうして私が女に狙われなければならないのっ?────
必死で声のする方に顔を向けてみた。女を監禁している部屋に来る女は、すなわち黒幕でしかない。どうにかして顔が見たかった。拘束衣が邪魔をしていなければ、唾を吐き掛けようとしたかも知れない。
「ああ……哀れやわ。うち自身、我が身がどれほど哀れかと呪ったこともおましてんけど」