≡ヴァニティケース≡

「うちには地位がおます。まがい物なりのプライドも。せやから要らへんねん! あんたはんみたいなまがい物の、さらに偽者は!」


────ホムン……クルス?────


 美鈴には解らなかった。女が言う言葉の真意も、自分が偽者扱いされる理由も、政治家の答弁のように音声だけが明瞭で、しかし意味不明だ。口が塞がれていて反論出来ないのが堪らなく悔しかった。


「んん! んん! ん! んっ!」


「はぁ。やかましおすな。しかもそんな顔してみっともないったらあらしまへん。ああ柏木……いえ、あんたはん。この女を辱しめたったらどう?」


「しかし、お嬢様がそれをするなと申されたのでは……」



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