≡ヴァニティケース≡
────だ、誰か、助けて────
頬に触れるねっとりとした舌の湿度、身体をまさぐるごわごわした手のひらの質感。熱さ、息苦しさ、恐怖と嫌悪と了承し兼ねる微かな快感が、戦慄を伴って美鈴の全神経を支配する。
おぞましかった。見ず知らずの男に身体を自由にされるのは、とても耐えられたものではなかった。「やめて!」「触らないで!」「ケダモノ!」そんな言葉だけが美鈴の頭を繰り返し過ぎる。
すると、それまでは美鈴の身体全体を緩やかに撫でていた男が、唐突に指先で乳房の先端を摘まんだ。
────んっ! くぅ────
自分の身体が忌々しかった。女の身体とは、どうしていつも屈辱の意識に反応してしまうのだろう。それが本能に組み込まれた習性なのか。それとも長きに渡って遺伝子に刷り込まれた条件反射なのか。気が遠くなるほど嫌悪しながら、呼吸が苦しくなるほど抗いながら、しかし身体は確実に熟して行く。