≡ヴァニティケース≡

 間違いない。美鈴にも内容が把握できた。探している。焦っている。走っている。そしてドアを蹴破る音がしたその途端、怒声と共に男達がなだれ込んで来た。


「くぉらぁあ! 女はどこだ!」「あそこに居ました!」「てめえ何してやがるんだ!」「殺っちまえ」


 どうやら七三分けの男は、いきなりのことに状況が飲み込めなかったらしい。男たちの侵入を見て、慌てて美鈴から身体を離した。


 そして体タイを翻し、侵入者に向かって叫ぶ。


「なんだ貴様らは! 誰の許しを得て入ってきた!?」


────え? なんなの? 何が起こっているの?────


 強姦される屈辱と死の恐怖は相反などしない。絶望と引き換えのおぞましい昂りを、逃れることが出来ない穢れた快楽を、ただ強いられるだけだ。



< 239 / 335 >

この作品をシェア

pagetop