≡ヴァニティケース≡

「ぐげぇぇっ!」


 肩口にレンチを落とされた七三男がうめき声を上げ、ごろんと転がるように崩れ落ちた。


 下ろされていたズボンが足首に絡まり、膝が開いている。携帯を持った手は床に押されて頭まで上がっていた。腰だけが僅かに浮いたその姿勢は、まるで何かに祈っているようにも見える。


「みっともねえ。ヒキガエルだってもっとマシな声で鳴くぜ」


 塚田が吐き捨てた。


「なんだか食べ残されたソーセージみたいですね」


「おいおい。そいつはソーセージに失礼ってもんだ」


「じゃあ、メッカに向かって祈りでも捧げてるんですかね」


「ははは、イスラム教徒に呪われるぞ? こいつはそうだな、言ってみりゃ……」


 パンッ!



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