≡ヴァニティケース≡

「撃たれとうないなら黙んなはれやっ! 柏木を殺したんはどいつや! 手ぇ上げ!」


「あいつは眠ってるだけだ。暫くしたら起きてくる。だから、な? そいつを貸せよ」


「やかましわっ!」


 パンッ ガシャン パリィーン


 声と共に女は二発目を撃った。今度は電灯に当たったらしい。激しい炸裂音と破壊音が同時に聞こえた。


 美鈴は声のする方へと首を動かしたが悲しいかな、視界の端を掠める人影を窺うのが精一杯だ。


「ほんまに撃ち殺したるで、脳天ぶち抜いたるからな」


 声の主は銃身を二つ折りにし、空の薬莢と実弾を交換し始めた。彼女が持ち出したのはライフルのようだ。


 ガシャンと、装填の終わる音が響く。非力な女が導く重たいライフルの銃口など、尾翼のないジェット機よりも行き先が覚束ない。



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