≡ヴァニティケース≡

「今だ、行けっ」「このクソ女!」


 塚田が言うが早いか、女の背後から男二人が飛び掛かった。


 パンッ チュンッ キンキンッ……


 壁に当たった跳弾がどこかに落ちた。たとえ弾の勢いはなくなっても、熱せられた弾丸が肌に触れてはたまったものではない。


「ああっ、なにすんのっ! 離しなサイ。離さんかぃワレ」


 だが、女はあっさりと取り押さえられた。彼女は語調を荒げ、じたばたと抵抗したが、荒くれ男二人の力には敵わなかったようだ。すぐに銃を奪われ、組み敷かれてしまう。


「あんたら、誰に言われて来たん?! はぁ、はぁっ、警察に突き出したるっ!」


「おうおう、威勢がいいな。警察が来たら困るのはお嬢さん、あんただろう」


 女は荒い息を吐きながらも抵抗をやめていない。よほど気性が荒いのか、それとも未だ勝てると思っているのか。



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