≡ヴァニティケース≡
男達が数人がかりで美鈴の拘束をほどいた。拘束衣の上からとは言え、バンドが巻かれていた部分が赤黒い痣となって忌わしい事実を告げている。
シーツにくるまれ抱きかかえられた彼女は、矢継ぎ早に起こった出来事の整理が付かず、ただ男たちの為すがままになっていた。正直、理解の範疇を超えていた。
しかし理解は出来なくとも納得はするしかない。人生にはそんな場面が多々あるものだ。人生最悪の日でも、脳が、身体がその通念に支配されているのが解る。
今は黙って助けられているのが正しい判断であるように美鈴は思った。
「……有り難うございます」
そうしてやっと絞り出した謝辞に込められた感情は、初めて男に抱かれた時のそれに近かった。嬉しいはずなのに何故か気持ちが高揚しない。そんな感情に近かったかも知れない。