≡ヴァニティケース≡
「あの……彼女は大丈夫だったんでしょうか」
走る車、後ろに飛び去る景色。美鈴は少し平静を取り戻した頭で、たぶん同じく落ち着いたであろう男に尋ねてみた。
「さあな。あの時すぐに救急車を呼んだから、多分今頃はベッドの上だろうさ。あんな発作だ、生きてる保証は無いがな。しかし……あんたもおめでたいな。自分を殺そうとした女だぜ?」
男がそう言うのも尤もだった。自分を殺そうとした者に配慮してどうするというのだ。
しかし、美鈴の心には言い知れないわだかまりが渦をなしている。
─────当事者の自分が、誰よりも状況を把握していないなんて─────
そんな事は到底了承出来なかった。