≡ヴァニティケース≡

 勿論男が言っている意味は理解出来ていた。だが、ここへきて納得が付いてこない。有り体に言えば、永久に守って欲しいのなら自分で俺たちを雇えと、そういう事なのだろう。そもそも、彼らを味方だと思っていたところに過ちが有ったのかも知れない。


 しかし、女は常に敵か味方かで相手を判断したくなる生き物だ。今になって「明日は敵かもしれないぜ」と言われたところで、それを納得出来るようには創られていない。じゃあ、あの笑顔はなんだったの? お金の為だけに守ってくれたの? と、そう訝ってしまう。期待を持ってしまう。


「着いたぞ」


「……有り難うございました」


「ああ、ゆっくり休めよ」


 突き放された直後の労いが、途方もなく悲しい。つまり美鈴を守ってくれていた男達は、研ぎ澄まされたガラス片のようなもの。外に向けている分には敵を寄せ付けないが、手に取ろうとすればたちまち怪我をする。結局は痛い思いをする羽目になるのだろう。



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