≡ヴァニティケース≡
「そう……」
美鈴は仕方なく、それ以上の情報を得ようとするのを諦め、部屋にはいると、風呂にも入らず布団へ潜り込んだ。
─────本当に欲しいものは手に入らない。子供の頃、スカートの裾から下着をはみ出させながら遊んでいたあの頃、誰かがそう歌っていたっけ─────
当時美鈴は、不遜にもこの世は全て自分の思い通りになると信じていた。それが今のこの有り様はなんだというのだ。
不意に、故郷の青い海が瞼に浮かぶ。那覇から北へと向かう国道58号線。残波岬、恩納岳、道路脇に立つヤシの木。バットで殴りかかってくるような真夏の日射し。海面にダイブするカツオドリの羽毛はウェットスーツ模様で、顔だけが妙に白い。
宜野湾海浜公園には中東を意識したビーチと日本庭園、近代的な建築物とバーベキュースペース用の東屋。あまりにもコンセプトがバラバラで、沖縄の海にあって沖縄の海とは思えなかった。車1台につき400円だったか420円だったか、入場料が掛かる。夜はちょっと怖い場所だった。