≡ヴァニティケース≡
「すぐ面接に来てくだはりますか?」
「本当に?」
「ええ、是非よろしゅうおたのもうします」
これまでの苦労が嘘のように、担当者との話はトントン拍子に進んだ。しかも東京からの交通費まで面倒を見てくれると言う、昨今の日本では考えられない程の厚遇だった。
「私は未経験者ですが、1日も早く御社の戦力になれるよう頑張りますので、どうかご検討の程を宜しくお願い致します」
面接の場で、美鈴は努めて低姿勢に振る舞った。アピール、ビジョン、プレゼンテーションと、しかしキャリアカウンセラーの言葉通りに事が運べば失業者など増えはしない。ありのままの自分でぶつかるしかないと、京都の駅に降りた時からそう考えていた。