ジェフティ 約束
 いままで、ラルフはテルテオ村から一歩も出たことがなく、周囲の森と谷沿いに続く豊かな村、遠くにそびえるベチカ山脈がラルフの人生のすべてだった。
 人の生き死には知ってはいたが、こんな形で命が絶たれてしまうのは初めてだった。生活の為に狩りに出て動物を捕らえたときも、父ダルクには――魂の解放だ。お祈りしろ――と教えられてきた。自分の命の糧のため、命を落とした生き物の魂を自分の体へと受け継ぐために。
 しかし、それと人を殺めることはまったく違う。
 シェシルはなぜ、あんなにも無情に人を殺すことができるのだろう。何のために人を殺めるのだろうか。自分の前にただ立ちはだかった障害物だから?ただ、傍らにいた自分を助けるため?
 なんの為に、あんな凄まじいまでの剣技を身につけたのだろう。
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