ジェフティ 約束
 国王軍の兵士といえど、身内の仕事が苦労せずに探せるという保証はなかった。昨今、難民が王都になだれ込むようになり、情勢は不安定で、王都に住まう民ですら仕事が見つからない状態が続いていた。
 エドの息子はアスベリアの推薦状と、彼が密かに裏で話をつけたおかげで、王都の富裕層の子息があずけられている寄宿学校の教師の職につくことが出来た。今は、オルバーにいるはずだ。
 それ以来、エドは下級兵士として身を落とし、アスベリアにその恩を返し続けている。アスベリアはこの任務が終わったら、エドを故郷へと帰すつもりでいる。彼は家と共に幸せに生きるべきなのだ。

「……なんだ?」
 アスベリアは、グラスに残った最後の一口の酒を飲み干そうとしたその時、何か外の違和感に気がついた。この部屋の窓からは、サンダバトナの堅牢な黒い門が見えるのだが、今の時間ならばそれが硬く閉ざされているはず。それが、逆にゆっくりと開き始めているのだ。
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