ジェフティ 約束
 傷ついて傷つけられ、自分の臓物を引きずり出すような憎しみを振り絞り、剣を握り締めて自分自身を裏切ってきた。
 ――私が今までの人生をかけて得たものは、そんな悲しみの上に成り立つものだったが。
しかし、もうそんな想いはしてほしくない、誰にも!
 エドは巫女姫の髪を撫でながら、自分が感じ続けてきた後悔に苛まれていた。
 ――どうしたらいい。このまま、オルバーへ行くべきなのか。王陛下への献上品としてこの少女を……。
「迷わないで」
 巫女姫が顔を上げた。
「え!」
「お願い、私を王に渡そうかどうかなんて、そんなことで悩まないで。
 言ったでしょう。私がいてもいなくても争いは起きるし、私が拾いきれない災いの星は、拾った星よりも多い。
 それに、私、待っているから」
 エドは、巫女姫がかすかに微笑んでいることに気がついた。その表情は歳相応のかわいらしい、花がほころぶような可憐な笑顔だ。
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