ジェフティ 約束
 ダンッ!
 廊下の向こうで男たちが床に叩きつけられて倒れる音が次々に聞こえてきた。
「ひぇ!」
それに混じって、廊下に顔を出していたほかの宿泊客が慌てふためいて部屋の中に飛び込み、ドアを勢いよく閉める音も廊下に響き渡る。
 激しく身を躍らせる影。兵士の腕を取り、こめかみを狙って躊躇せずにナイフの柄の石突で殴りつけ、一瞬で気を失った体を突き飛ばす。
 ――シェシルは剣を握らなくても戦えるのか。
 動き回る影を見つめながら、シェシルが先ほど言っていた事が正しいのだとラルフは悟る。兵士たちはこんな狭い室内での戦い方を知らないのだろう。長い剣を振り回す事もできずあたふたしていた。その隙をついて、シェシルの蹴りが飛んでくる。
 ズガッ!
 兵士が闇雲に振り回した剣は、シェシルに届くどころか、剣先が壁にめり込む始末だ。一方シェシルは大きな荷物を背中に背負ってはいたが、身をかがめナイフ一本で男たちの懐へ飛び込んでいく。その軽い身のこなしは、影を見ているだけでもラルフに伝わってきた。
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