ジェフティ 約束
 兵士が激痛に堪りかねうめいてその場にしゃがみこむ横っ面を、シェシルは容赦なく殴りつけ、ぎらりと黄金の炎の踊るアメジストの瞳を一瞬ラルフに向けた。
 ――容赦なく叩きのめす。自分がやられないために。

 ラルフは慌てて、倒れている男たちを飛び越え、一気に階段の踊り場へと駆けくだった。
「いたぞ、テルテオのガキだ!」
「逃がすな!」
 しかし、ラルフはその声に取り囲まれてしまった。階段の踊り場まで下りてきたラルフは、一階のロビーで待ち構えていた兵士たちの、むき出しに光る憎悪に満ちた瞳を見つめる。
 ――なぜ、憎まれなくちゃならないんだ。
「畜生、手こずらせやがって!」
「観念しろ、小僧!」
 男たちは口々に恨み言を言いながら、ジリジリと階段を上りラルフへと迫ってくる。ラルフはただ、抜き身の短剣を前に構え、階段を上がってくる兵士たちを見つめた。
「何している、ラルフ!さっさとそこから飛び降りろ!」
 後ろからシェシルの罵声が飛んできた。
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