ジェフティ 約束
「上昇霧だよ。きっと、草原地帯が雨季に入ったんだ。南風に乗って、その湿った空気が山肌を駆け上がってきているんだよ」
と、ラルフはもうすぐこの辺りにも雨季がやってくることを予測した。
それならば、なおさら急いでここを抜けなくてはならない。ノベリアの国土に降り注ぐこの雨期の頃の雨は、昼夜を問わず降り続き、旅人の行く手を阻む障害としても有名だ。三人は濃密な重苦しい空気に包まれながら、手探りをするように前へと進んでいくしかなかった。
湿った重い空気が、辺りを包む闇の中を漂う頃、ラルフは野営している草地の脇を流れる小川に布を浸した。小川の水は、ベチカ山脈の頂上、万年雪から溶け出した雫が岩の間に滲みこみ、また別の岩間から湧き出して流れているのだ。
「なあ、そんな激しい剣の稽古、なんの役にたつんだよ」
ラルフが腫れ上がった腕の黒あざに、水に浸した布を押し当てている横で、インサが干したパルチという小魚の頭を口に放り込みながら尋ねてきた。ラルフは痛みと自分への歯がゆさで思わず顔をしかめた。
「……なんのって、戦うために決まってるじゃないか」
と、ラルフはもうすぐこの辺りにも雨季がやってくることを予測した。
それならば、なおさら急いでここを抜けなくてはならない。ノベリアの国土に降り注ぐこの雨期の頃の雨は、昼夜を問わず降り続き、旅人の行く手を阻む障害としても有名だ。三人は濃密な重苦しい空気に包まれながら、手探りをするように前へと進んでいくしかなかった。
湿った重い空気が、辺りを包む闇の中を漂う頃、ラルフは野営している草地の脇を流れる小川に布を浸した。小川の水は、ベチカ山脈の頂上、万年雪から溶け出した雫が岩の間に滲みこみ、また別の岩間から湧き出して流れているのだ。
「なあ、そんな激しい剣の稽古、なんの役にたつんだよ」
ラルフが腫れ上がった腕の黒あざに、水に浸した布を押し当てている横で、インサが干したパルチという小魚の頭を口に放り込みながら尋ねてきた。ラルフは痛みと自分への歯がゆさで思わず顔をしかめた。
「……なんのって、戦うために決まってるじゃないか」