ジェフティ 約束
 それと、ジェイを狙うそのもう一つの勢力にシェシルの知る人物が絡んでくるとなれば、戦乱は避けられなくなるのではなかろうか。
 ――ラルフの言うとおり、ここは後を追って様子を伺うしかないか。それと、無茶はできるだけ避けないと、追われる以上に厄介事を増やしたら、それこそジェイに追いつけなくなるだろうな。
 暗闇の中で、ラルフの気配がだんだんと消えてゆき、空気の揺らぎが静かになった。シェシルはふと息を吐く。
 ――ここは相手の出方をじっくりと見定めてからだな。
 シェシルは闇を見つめ、降りしきる雨の雨音にじっと耳を傾け、夜が白々と明け行くまで岩場の向こうの野営地の気配をうかがっていた。

 雨はやまない。しかし、早朝の靄の立ち込める川岸では、男たちが出発の準備を始めていた。ラルフたちも荷物をまとめて男たちの後をつけてゆく。
 ラルフは昨日の夜中に盗み聞きした男たちの会話を思い起こしていた。
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