ジェフティ 約束
「いや!頭は良いが度胸の足らない奴だと思っていたが、まさかボルシェ=サズルに剣を向けたとはな。私の目も節穴だな。
 このことは、私から王に報告しておく。ペルガの件は、私が何とかしてみよう。君はゆっくり休んで、早く身体を治しなさい」
 ベラスはそういうと、ボルシェ=サズルの剣を手に取り――さすがの細工物だ――と感嘆の声を上げ、傍らにあったテーブルクロスを剥いでそれに包むと部屋を出ていった。

 アスベリアはため息をつきながら、背中に当てられたクッションに身体をあずけた。なぜか、上司であるベラス将軍にあれほど褒められても、嬉しさは湧き上がってこなかった。焦燥感が身体を包み込み、重い空気がのしかかっているようだった。
 ――オレは、どうしたかったんだ……。上からの賛辞があれほど欲しかったんじゃないのか?認められたくて、必死に逃げ回ったんじゃなかったのか?
 そう自分に問いかけてみたが、返事はいっこうに返ってはこなかった。ただ、無性に虚しさがこみ上げてくるだけだ。
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