ジェフティ 約束
 一瞬、辺りが白いものに覆われ、ラルフの頬を冷気が柔らかく撫でていく。体を押されるような圧力を感じ目を閉じたが、それ以降は何か起きる気配も音もない。ラルフはゆっくりと目を開けると当りを見渡した。
「すごい、真っ白だ」
 ラルフのすぐそばで、シェシルが動くのがわかった。手のひらがラルフの背に当てられるのを感じ振り返る。腕を伸ばした先にいるシェシルの姿が、うっすらと白く霞んでいた。
「好都合だな。この霧が晴れないうちに街に入ろう」
 辺りは濃密な霧に飲み込まれ、急に薄暗くなり冷気すら漂っていた。
「いくぞ、インサ」
 姿の見えなくなったインサに声をかけ、シェシルはラルフの背中に手を立てたまま歩き始める。
三人は濃霧の立ち込める中を、オルバーへと向かい歩みを進めた。
< 506 / 529 >

この作品をシェア

pagetop