ジェフティ 約束
「おい、そこの……」
 がちゃりと金属音が鋭くラルフの胸を突き刺すように辺りに響いた。傍らを歩いていたシェシルの手が、すばやくマントの中の長剣の柄に伸びたのを感じる。ラルフの体が硬直し歩みが止まりそうになった。
「そのまま歩け」
 シェシルの低い囁きがラルフの背中を押した。
「おい!そこの物乞いの小僧!」
 兵士はラルフの前を歩くインサの襟首をぐいっと掴み、城へと向かう人々の列から引きずり出した。思わずラルフは顔を上げ、シェシルの横顔を仰ぎ見る。黒いマントの人の列の中、擦り切れ汚れきったマントをかぶったインサの姿はやけに目立っていた。インサは兵士の腕に拘束され、身をよじって抵抗している。
「なんだよ!放せよ!」
 突如起こった騒ぎに、周囲の人々も歩みを止め整然と並んでいた列に乱れが生まれた。
「姐さん!置いてかないでくれよ!おれは何もしてねえよ」
 何もしていないと騒ぐこと事態、何かを犯した者の逃げ口上に聞こえる。シェシルは諦めたようにため息をつくと、ラルフにしか聞こえないような小声でぼそりと呟いた。
「……ラルフ、お前はこの列にしたがって一人で城下に入れ。私は後から追うから。城に入ったら、鍛冶屋のシェルグという爺さんを探せ。気をつけろよ」
< 508 / 529 >

この作品をシェア

pagetop