初恋エスカレーター

「…―。」

ゆずは、階段の1段1段を踏みしめながら進んだ。

「ここだ…」

ゆずの目の前には1ーAと言う札が掲げてあった。深呼吸をして1歩進み見上げるとそこは、シンとした教室だった。

「…早く来すぎたのかな?誰も居なくて良かった…落ち着こう…。」

呟いて、黒板に書かれた席を見ながら自分の席につこうとした

その時…!

「俺、いるんだけど…」

その声に、ゆずはビクッとした。声はゆずの後ろの方から聞こえた。

「え…―」

かすれた声で振り返ると、春の日差しが差し込む一番後ろの席に人影があった。

「俺がいますよ〜っ!!」

そう言うと、ゆずに近づいてきた。

「あ…あ…あの…」

ゆずが戸惑って、足を引きずりながら下がると…

「…」

男子生徒は足を止めず、ゆずをまっすぐ見つめる。

「カツ…」

ゆずの足が何かにぶつかった。横目でみると、壁だ。
男子生徒は、ゆっくり壁に手をかけた。ゆずは身動きがとれなくなってしまった…

「……。」

2人が沈黙していると、男子生徒がニコッと笑い

「俺、柳瀬 瞬汰…キミは?」

「さ…さゎ…爽波ゅ…ゆず」

急に名前を聞かれて戸惑って、上手く言えなかった。
「爽波ゆずちゃんかぁ〜可愛い名前だね。顔も…」
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