貴方に愛を捧げましょう


あれはただの“過呼吸”じゃない事は確か。

けれど、よく分からないと言うのも、あの発作について病院に行ったことはないから。

両親も知らない。

以前、ネットで調べただけ。


精神的に不安定になるような事があると、時々、今日のように過呼吸の発作が出る。

以前はただの過呼吸だと思っていたけど、調べてみると、そうじゃなかった。


普通、過呼吸というのは運動の後に起こるらしく、ほとんど運動なんてしないあたしには関係無い。

あたしの場合は普通じゃない。

調べて辿り着いたのが──過換気症候群。

それはいわゆる心身症の一つで、精神的緊張やストレスによって身体に異常をきたす、というもの。

目眩や動機、もちろん呼吸がしづらくなり、酷い時には失神してしまう。


まぁ、所詮ネットで調べたものだから、断言は出来ないけど。

でも、多分そうなんだと思う。

そして──そんな事を彼に教えたって、仕方がない。


「もう寝るわ」

「由羅様……」

「聞きたい事は一つなんでしょ。なら、もう終わりよ」


そう言い切ると、彼の瞳が力なく伏せられた。

まるで何を考えているのか分からない表情を浮かべている。

それを横目に、あたしは制服を脱いだ。

制服を着たままじゃ寝苦しいけど、だからといって、わざわざ服を取りに行く気力もない。

脱いだ制服は適当に畳んで、枕の横に置いておいた。

下着しか身に纏っていないけど、毎朝見られているから何とも思わない。

今日は特に暑いし、これくらいがちょうど良い。


お風呂は明日入ろう。

そう決めて、あたしはベッドに横になった。

彼に背を向けて。


「再びあのような事があれば……その時、私にして欲しい事はありますでしょうか」


もう何も話してこないだろうと思っていたら、魅惑的な深い低音が、静かに言葉を紡いだ。

それは質問じゃなく──確認ね。

上手い言い方。


「放っておいて」


あたしにとって肝心な望みを叶えてくれない彼には、そう言うしかない。

あなたが本当の意味で“忠誠”を誓っているのは、一体誰?


封印を解いたあたし?

あなたを封印した人?


あたしはその答えを、本当に知りたいのだろうか。

……知ってどうするのよ。

うん、それがあたしの答え。


あたしは嘲笑を浮かべながら、丸くなって目を閉じた。


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