貴方に愛を捧げましょう
あたしのきっぱりとした様に、彼は力なく項垂れた。
表情に浮かんでいた影が更に濃くなり、瞳は鬱としている。
蜂蜜色の瞳にまで射しこむ、暗い影。
そんな彼の様子を見ても、凝結したあたしの心からは、同情心なんてものは湧いてこない。
手を伸ばし、葉玖の鋭角的な顎先に指を添えて軽く持ち上げる。
黄金色の髪がさらりと白い頬を滑り落ち、あたしの手を掠め撫でていく。
潤んだ黄玉のような瞳と、視線がぶつかって。
「話して」
一言、そう告げた。
難しい事を言ってるわけでも、無理難題を押し付けてるわけでもない。
話が聞きたいだけ。
この退屈な夜を、あなたの噺(はなし)で紛らわせてほしいだけ。
「承知致しました……話しましょう」
やっと受け入れた彼を見て、あたしは身体を後ろへ戻そうとした。
けれど、彼の手がそれを妨げる。
伸ばしていたあたしの手をそっと握ると、彼は自分の方へ引き寄せて…──指先に、キスをした。
……なに、してるの。
たった今為されたその行為に驚いていると、彼が上目遣いで悲壮感漂う眼差しをを向けてくる。
「ですが、話を聞かれても尚……どうか、私を嫌わないで下さい」
その懇願の言葉に、思わず眉を潜めた。
嫌う…? 話を聞いて、あなたを?
馬鹿らしくて、渇いた笑い声が口から洩れた。
握られていた手をほどき、両腕で膝を抱えて彼を見下ろす。
「大丈夫よ。嫌うも何も、あたしはあなたの事をなんとも思っていないから」
感情の無い、無機質な笑みを浮かべて。
そんなあたしに対し、葉玖は…──哀しげな微笑を讃えた。
その理由は、あたしには解らないし解りたいとも思わない。