好きだ好きだ、大好きだ。

「お待たせ」
「い、いえ」

廊下を抜けた先のリビングは、本当になにも置かれてなくて、あるのはテレビと本棚と、小さなテーブルにふたつのスピーカーだけだった。

「テキトーに座っててよかったのに」
「あー……うん。でも、人の家ってなんか落ち着かなくてね」
「ふーん」

小さく頷きながら私の前を通りすぎた、いつも通りの白と黒の練習用のユニフォームに身を包んだ夏希君は、本棚に向かい、そこから1枚のDVDを取り出した。

そしてそれを、私にポーンと投げてよこすと「お湯沸かしてくるから、観てて」と言って、壁1枚で隔てられたキッチンらしき場所へと消えて行った。

「……」

えっちぃDVDが出てきたら、どうしよう。
くだらない事を考えながらテレビの前にしゃがみ込んだ私は、その下のプレーヤーの電源を入れ、しばし悩む。


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