好きだ好きだ、大好きだ。
思わず、見惚れていた。
力を入れていないみたいに見えるのに、それでもドンドン球を打ち返すその人。
よくわからないけれど、まるでさっき事務室で流れていた野球中継のバッターみたいな打ち方だから、きっと上手なんだと思う。
ほぇー。
ホントよく飛ばすなぁ。
「……」
見惚れてボーっとしていたから、きっと油断したんだ。
1回で、23球。
それがこのバッティングマシーンから投げ出される球の数。
23球投げ終わると、ボールが出てくる穴の横の赤いランプが消えるようになっていて、そんな事は、ここで働いているんだから私は当然知っている。
それなのに……
そのランプが消えていた事にも気付かないくらい、その人の打ちっぷりに、見惚れていたんだ。
ネットに指をかけたまま、その姿を眺める私。
その目の前で、白と黒のユニフォームを着たその人が、ゆっくりとバットを下ろした。