好きだ好きだ、大好きだ。

「あっちぃーな」
「夏希君!」
「おー。お疲れー」

フェンスに両手をついて、ダラーンと体重をかけて笑うのは、キャッチャーのプロテクターを付けたままの夏希君だった。

さっきまで、グラウンドの端で、もう試合が終わったはずのピッチャーさんと、キャッチボールをしていたはずなのに。

「まだ試合あるの?」
「ん? ないよ」
「じゃー、なんでキャッチボールしてたの?」
「あぁ、あれはクールダウンね」
「クールダウン?」
「そ。マラソンの後とかも、ゆっくり歩いたりするだろ?」

目の前で、今日も私の“なんで?”に答えてくれる夏希君は、当たり前だけど、いつもの夏希君。

「……どした?」
「う、ううん!」

ついその表情を、落ち着かない心臓で眺めていた私は、夏希君の声にハッとした。

だってね。
さっきまで、グラウンドで檄を飛ばしていた夏希君は、本当に厳しい顔をしていて……。

普段の表情とは、やっぱり全然違うなって思ったから。

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