その仮面、剥がさせていただきます!
なんだか体が宙に浮くような感覚がする。
自分の教室にどうやって帰ったかもよく覚えていなかった。
「それで?計画は進んでるの?」
脱力のあまり、机に顔を伏せていたあたしの後頭部に向かって、同じクラスで隊員のユメカが聞いてきた。
あたしは喋る力もなく、顔も上げずに左手の二本指でピースサインを作り持ち上げる。
「え?それって潜入に成功したってこと?りっちゃん、やるじゃん」
嬉しそうに言った後、パタパタと足音が遠ざかった。
なんだか異様に身体が疲れている。
この気怠さはいったいなんだろ。
目を閉じたあたしは、あの教室での出来事を思い返してみた。
あたしとお付き合いしてもいいよと言った王子に詰め寄る隣の煩い男。
「あ”?陸人、お前人の忠告聞いてなかったのかよ!?寄りにもよってこんな女……」
立ち上がってあたしを指さす男。
「春樹。彼女の前で失礼だ」
「どこが失礼なもんか。だってコレ、ふざけているとしか思えねぇよ」
ムキになる春樹という煩い男。
「ふざけているんじゃなくって個性的って言うんだよ」
ね?と、王子はにこやかにあたしに微笑んだ。
「は?陸人の思考が分からんねぇわ。ユウ。お前からもなんか言ってやれよ」
机に伏せていたもう一人のお友達?のユウが怠そうに顔をあげた。
「陸人の好きなようにすれば……?」
なんともやる気のなさそうな腑抜けた声。
「ユウ!他人事って顔するのやめろよ。だいたいさ……」
春樹がユウの傍に行ってお説教が始まると、前にいた王子があたしの顔を覗き込んだ。
「ケータイかして」
爽やか過ぎる顔で微笑んだ王子に思わずスカートのポケットの中の携帯電話を差し出す。
「はい」
王子があたしのケータイをスラリとしたキレイな指で操作すると、また微笑んで手の中に返された。
あたしはボーっとその動作を見ていた。