その仮面、剥がさせていただきます!
きったないスリッパを履き替えて、なるべく目立たないように隅っこの壁に背中を凭れさせて立っていた。

王子を待つために。



あたしの前を何人もの生徒が通っていく。


「ねえねえ聞いた?今度は三組の上原さんだって」

「知ってる。みんな笑ってたよ。今回は何日もつんだろうね」

「何日って……せめて一週間は付き合うでしょ~?」

「だってあの上原さんだよ。王子の気まぐれとしか思えないよ」

靴を履き替えている女子の会話。パタンと靴箱の扉を閉めると振り返った女子と目が合った。


「あ……」

あたしを確認すると、気まずそうに二人の女子が立ち去る。





別にいいんだけどね。



でも。『あの上原さん』ってなによ……




沸々と怒りが沸いてきた時、王子の姿が見えた。その後ろには春樹の姿も見える。
隅っこにいるあたしに気づかないみたいで、二人の会話が徐々に大きくなってきた。


「陸人。だから断れって言っただろ。あんな女」

「あんな女なんて言い方リツに失礼だよ。それに、女の子からの告白を男が断っちゃいけないんだよ」

「またそんな事言う。いつからそんな法律ができた?そもそも、女とか男とかカンケ―ねえの。陸人はこだわり過ぎ」

「春樹はもっと女の子のこと分かってあげた方がいいよ」

「は?一番お前に言われたくねえ……」


はあ……と脱力した春樹。そして横にいた王子があたしに気付いて王子スマイル。


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