その仮面、剥がさせていただきます!
溝掃除ばかりするあたしを見兼ねたのか、立っているあたしの傍にリクが近寄ってアドバイスしてくれる。

「右手を後ろにしたら、足はこうだよ。1.2.3で投げるんだよ」

「う……ん」

「あそこに三角の矢印があるでしょ?リツは左に曲がる癖があるから、真ん中の三角の一つ右側を狙うといいよ」

リクが優しく教えてくれているんだけど、全然頭に入ってこない。

だって……

指導してくれるのはいいんだけど、ち、近すぎる……

リクはあたしの後ろに立ち、胸をあたしの背中にぴったりと引っ付くように密着している。そしてその体制で両手を握って教えてくれているものだから、あたしの後ろ半分が熱くなる。

「こんな説明で分かったかな」

リクの息があたしの頬に掛かりそうなほど顔が近くにある……
心臓の音が後ろにいるリクに聞こえてしまうんじゃないのかというぐらい、大きく脈を打っていた。

「じゅ、十分分かったから、投げてみるね」

リクにとってはこんなこと大したことはないんだろうけど、あたしにしてみれば今までの日常ではあり得ないこと。こんなことでドキドキしていることを悟られないようにと、あたしはリクから離れてボーリングの球を掴み、胸の前で構えた。

確か、あの三角に向かって投げるんだったっけ?

フォームはめちゃくちゃだけど、リクに教えてもらった場所めがけて球を放った。


「あ……」

球は溝に落ちることなくレーンを進むと、白いピンに当たり、数本が倒れた。

「やった!リク。倒れたよ」

振り返り、嬉しさのあまりぴょんぴょん跳ねるとリクも立ち上がってあたしの両手を取り一緒に喜んでくれる。

それからというもの、投げる球はほとんどがピンに当たるようになり、あたしは初めてボーリングが楽しいと思えた。

「リツ。もう1ゲームする?」

「うん。それじゃ、もういっかい……」


なんの躊躇もなく笑顔でそう答えた。


あれ?


何か違うような……?


リクが画面を操作している手を掴むと、その動きを止めた。


あたし、また脱線してた?




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