レモンムスク
「ちょ、っと!何ですか!!!やめて!」
私の問いかけにも反応せず、
ひとりでズカズカと歩き、人目のつかない階段まで引っ張られた。
「お前、何で分かったんだ。」
最初に口を開いたのは彼だった。
「ハァ、ハァ、ハァ、…何のことですか。」
体力の無い私は、引っ張られて走っただけで疲れ果てて、一言喋るのが精一杯だった。
「とぼけるな。分かったから、俺のコトずっと見てたんだろ?…はー…くっそ…何でバレたんだ。」
「ちょっと待ってください。本当に何のこと?」
彼がひとりでブツブツ言っている意味が分からなかった。
「だから、あの日、お前の眼鏡取ったのが俺だって、何で分かったんだって聞いてるんだよ。」
え?
うそ
私の嗅覚すぐれすぎじゃありませんか?
「何とか言えよ。」
「え、いや…その………あなただったんですか…」
「は?」