月を狩る者狩られる者
廃ビルにこだまする十六夜の笑い声が、私の鼓膜だけでなく全身を震わせる。

今度の震えは、確実に恐怖からくるものだった。



笑い声が徐々に小さくなり、十六夜の視線がヒタリと私をとらえる。

私は、金縛りにあったかの様に動けない。

まるでヘビに睨まれたカエルだ。



「本当はね、望。君も殺すつもりだったんだよ?」

美しく優しい微笑みも、先ほどの狂気を見た後では恐ろしいものにしか映らない。


「だってさあ、彼女と別の男との子だよ? 言わば愛の結晶だぁ! 憎まないわけがない!」

でも、と付け加えて十六夜が近付いて来た。


私は動けない。

十六夜の狂気は私の心を侵食して、僅かな抵抗すら出来なくさせた。


数歩で目の前に来た十六夜は私の顎を掴み上向かせる。
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