トマトときゅうり

トマトときゅうり。


 私の髪がシーツの上に広がっている。

 指が、唇が、足が腕が、絡まって一つになる。

 首筋に熱い口付けを受けて吐息がこぼれる。ハスキーな声が耳元で舞って、思考回路まで支配された。

 どんどん迫る高ぶりに翻弄されてつい声を上げると、きゅうりが嬉しそうに、もっと聞かせろと呟く。

 その顔を見せるのは、俺だけだと約束しろと。

 その声もこの体も、お前の全部は俺だけのものだと。

 痛みと快楽の波に溺れて、私は私じゃないみたいだった。

 私の小さな部屋は二人の体温で更に暖められ、空気までも色を変えている。

 熱くて、とろけて、ひとつの塊になる。取り合っている手さえ、判別が出来なかった。


 そして私は最高に幸せだった。


 人間は、幸せでも泣けるってことを知った。


 めちゃくちゃ格好いい男の人が


 好きになってしまった男の人が


 私を抱いて微笑んでいる――――――――――――――




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