あやまち
確かに、遠征に行く前にそんなことを言っていた。


でもあたしは、バイトへ行くのに不便だったから断ったんだ。


結局、翔太の嫌な予感は当たってしまったってことなんだよね。


そのときに渉に抱かれてしまったんだから。



そういえば……


その頃の渉は普段とは少し違っていた。


『本物のキス、してみる?』って言われたり……


わざわざあたしのために、夕食を作ってくれようとしたり……


今思えば、あれが渉なりのアピールだったのかもしれない。


そんなことを考えているあたしの横で、翔太がまた口を開く。



「こうやって一緒に住んでしまえば、安心できる気がしてた。でも――」



そう言って顔を上げた翔太とまた視線が絡む。



「結局、俺の気持ちを悠亜に押し付けてただけだったんだって気付いた」

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