薬指の約束
その3つ。



駅前から映画館、映画館から公園。


たったこれだけで、たくさんの女の友達に会っては話しの繰り返しで、

結局、予定していたよりも2本遅い映画を観ることになってしまった。




歩いているときは手を繋ごうとしてきたり、

女の友達に会って、

「この子誰?」

と聞かれると

あたしの肩に手を回して



「俺の可愛い後輩ちゃん」

とか言っていた。



そして、女の人からの電話はさっきのが初めてではない。


映画館に行くまでに2回、映画館から公園に来るまでに3回、

公園に来てから1回。




あたしと居るときだけでも6回もかかってきている。



どれも相手の声が漏れていて、聞くつもりはなくても全て聞こえてきていた。




大体が
『今から会えない?』
とか言うもので、

『今夜会おう』
って言ったのは、さっきの人が初めてだった。




はっきり言って、今日1日、
映画を観れたのは良かったけれど、

あまり楽しくなかった。



正直言って、帰りたいと思う瞬間がたくさんあった。




今すぐにでも家に帰って、依緒ちゃんの声を聞きたくなった。




いっそのこと、今から電話しようか?




そう思ったときだった。
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