薬指の約束
ベンチに座っていたあたしの隣に吹田先輩が座り、

あたしの肩を抱き寄せた。




まだ春だからか、

公園の時計は4時半を指しているのにもう薄暗い。




「萌那実ちゃん、
今日楽しかった?」


「全然楽しくなかったです」
なんて言えるはずもなく、


「はい、楽しかったです」

とあたしは答えた。




「俺さ、

萌那実ちゃんのことずっと可愛いなーって思ってたんだけど、


今日一緒に居て、思ったこと言っていい?」


肩を抱き寄せる力が段々と強くなっていった。

正直、やめてほしい。



「どうぞ…」




「俺、萌那実ちゃんのこと好きだ。

俺と付き合ってくんない?」



どうしよう、どうやって答えたらいいの。


答えはもう決まっている。

当然のように、NO。


でも、こんな風にされてるのに、どうやって断ったらいいのかわからない。




「どう?嫌?」



少し肩を離して、顔を覗き込んできた。



どうしよう…怖い。
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