薬指の約束
「萌那実ちゃん?」


あたしが答えるのに困っていると、
吹田先輩はそのまま顔を近付けてきた。



これって、もしかして…。



「やっ…」


恐怖で出なかった声を振り絞ってやっと出た声。



すると吹田先輩は顔を少し離した。



「何、俺のこと嫌なの?萌那実ちゃん」



「あ、えっと…嫌っていうか…」

こんなの、怖すぎて嫌だなんて言えないよ…。




「嫌とか言わないでよ、

悲しくなるじゃん?」


吹田先輩はまた顔を近づけて、今度は少し笑った。

薄暗い中、気味が悪いくらい笑っている吹田先輩を見て、


声が出なくなってしまった。





「っ…」


お腹に冷たいものが触れた。


目をよく凝らして見ると、
吹田先輩の手があたしの服の中に入っていた。



「吹田せんぱ…、やめてください…」

怖くて怖くて、仕方なかった。




「黙って、声出すな」


返ってきたのは、さっきまでとは全く違う、

吹田先輩の低い声だった。
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