薬指の約束



中1の春、

まだ新しい制服を着始めて、1ヶ月も経っていない頃。


あたしは、1人の男の子に声をかけられた。




その日は、仲良くなったばかりの依緒ちゃんと一緒に
遊びに行く約束をしていて、
職員室に呼び出された依緒ちゃんを昇降口で待っているところだった。



「咲坂萌那実ちゃんだよね?」

声をかけてきたのは、
数人の見覚えのない男の子たちだった。


全員がいかにも"チャラい"という言葉が似合う格好をしたいた。




まだ、学校にもクラスにも慣れ切れていなくて、
男の子の名前はともかく、
女の子の名前もほとんど覚え切れていなかった。


「あの…誰、ですか?」



「ああ、ごめんごめん。

俺、3年の吹田直幹(ふきた なおき)って言うんだけど、
メアド交換してくんない?」



数人の中の1人が言った。



「あ、えっと…」




「ごめんねー、こいつ入学式のときから、
萌那実ちゃんのこと可愛いとか言っててさー。

だから、メアドだけでも交換してやってくんない?」



「お願いっ!」


「頼むよー、
こいつまじいい奴だからさー」



数人の男の子は口ぐちに言った。
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