その瞳で見つめて~恋心~【完】
「あっ」

「はっ?」

彼に抱いていた問題は解決したと安心していると、さらにもう一つ疑問に感じていたことを思い出す。

蓮夜君はあたしが突如、声を出したので驚いた顔をする。


「ど、どうした?」

「蓮夜君って有名人なの?」

「は? 何で、そう思うの?」

「だって、蓮夜君を見た瞬間のみんな、蓮夜君だってすぐにわかったから」

「………………」

すると、蓮夜君の携帯が鳴った。


「あっ、ごめん。電話みたい」

蓮夜君はあたしから離れた電灯の下に行き、携帯電話を取り出して通話する。

あたしに背を見せて話しているから様子はわからなかった。

しかし、しばらくして話が終わったらしく、携帯をポケットに仕舞い込むと駆け寄ってきた。


「ごめんね」

「ううん、大丈夫。──あ。家に着いたから、もういいよ」

「そっか。じゃあ、おやすみ」

「うん、おやすみなさい」

蓮夜君は手を振り、あたしの家を通り越していった。


合コンという新しいことを知ったし、蓮夜君と一緒にいて楽しかったなぁ。


すっかり心を満たしたあたしは、思わず鼻歌を歌って門扉に手を伸ばす。

──そんなとき、蓮夜君に有名人なのかと質問した際、凍りついたように無表情になった気がするシーンを思い浮かんだ。


けれども、あまりにも一瞬だったので、気のせいだろうと思い返して、自宅の中へ入った。
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