その瞳で見つめて~恋心~【完】
 翌日──。


「由奈、ありがとう! おかげで楽しかったよ!」

「う、うんっ。よかった」

朝、教室に入ると同時に、奈月ちゃんがうれしそうに満面の笑顔で報告してきた。


こんな奈月ちゃん見たの、初めてかも……。


あまりにも生き生きとした彼女の表情に、こちらまでうれしくなる。


「水嶋さん!」

「え?」

自分の席に着いた瞬間に、教室の前で昨日も聞いたような少しかすれた声が耳に届いた。


「れ……、蓮夜君?」

振り向くと、蓮夜君が立っていた。


蓮夜君はあたしと目が合うと、自分の教室でもないのに堂々と教室に入ってくる。


「覚えててくれたんだ?」

「うん」

ていうか、近い……よね?


蓮夜君はあたしの机の前に立ち、顔だけが距離を縮めている。


「俺と付き合わね?」

「え?」

「俺、水嶋さんのこと、気に入った」

「ええっ!?」

あたしや、その場にいたクラス中の生徒たちの驚く声が重なった。


昨日知り合ったばかりで、おまけにこんな大勢の前で毅然とした態度で告白されれば、誰だって驚くに決まっている。


「ご、ごめんなさい。あたし、彼氏がいて……」

パニックに陥る寸前のあたしは、あくまでも冷静でいようと丁重に断る。


「いいじゃん、別に。進藤先輩なんかより、俺にしなよ」

しかし、彼は懲りもせずに、ますます迫ってくる。
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