その瞳で見つめて~恋心~【完】
そんなことは無理だ。

あたしには進藤先輩という彼氏がいるし、進藤君という好きな人だっている。


蓮夜君を気にかけている余裕など、あるはずもない。


「──あのさ、うるさいんだけど」

え?


何を言われても意志は変わらないと、頑なに断ろうとした矢先に、言葉を遮られる。


その声はドアの前から聞こえてきたので、また訪問者かと思って廊下の方へ目を向ける。


「ん? あ……、進藤か」

え、進藤君……?


久しぶりに登校してきた進藤君に、我が目を疑った。


「話聞いてんの? うるさいっつったの」

進藤君は蓮夜君に呆れながら、めずらしく低い声を出している。


──怒っている。

彼と少しばかりは付き合っていたので、あたしはすぐにわかった。


「は? 水嶋さんの彼氏の“弟”に関係ないじゃん」

「今は水嶋さんの“クラスメイト”として、言ってんの」

「ふーん」

一見して穏やかではない進藤君に対し、蓮夜君は余裕な笑顔を作っている。


「ま、とりあえず引くわ。水嶋さん、じゃあな」

進藤君と蓮夜君の二人はしばらくにらみ合うと、蓮夜君は先に教室を出ていった。
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