大切なもの
「ごめん…、こんなこと言ってごめんね…っ…」

樹はそっと私を離した。

「沙和、そのお願いは…聞けない」

…そうだよね。

「沙和。無理に消そうとするから、苦しくなんだ。
それに…。颯太を好きだったから、今の沙和があるんだ。
今の沙和があるのは、その過去があるから。
だから、それを消すなんて、俺にはできない」

樹の言葉は、深く、優しくて。

「颯太のことを受け止めて、前に進んでいけばいいよ。
沙和のペースでいいんだ。ゆっくり、一歩ずつ。
進んでけば、それでいい」

また、私の心を…癒していく。

「ありがとう…樹……」

樹はいつだって、

私を、暗闇から救ってくれる。

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