大切なもの

「もう…いいよ。…ごめん、辛いこと言わせて」
「樹のおかげで…癒えてたのに…っ。
なんで…なんでまだ…涙がでるんだろう…っ。
ごめんね、樹…、ごめん…っ」
「なんでお前が謝んだよ。お前はちっとも悪くなんかねぇだろーが」
「違うよ、私が悪いんだよ…っ！！
樹のことが、好きなのに…！！好きになってるのに…！！
どうして…っ。ほんと…私最低な女だよ…」
「お前…本当バカ」

樹は私を抱き締める強さを強めた。

「なんで自分のことそんな風に言うんだよ…」
「だって…っ。
ねぇ、樹…お願い。
私のなかから…颯太のこと消して…！
忘れさせて……っ」

自分を好きと言ってくれている樹に言うセリフじゃないなんて分ってる。

だけど、優しい樹に…縋って（ｽｶﾞｯﾃ）しまう…。