大切なもの
落ちついたころには夕陽が沈みかけていた。

「じゃ、帰るか。送る」
「えっ!?さすがにダメ!樹試合で疲れてるのに私の話聞いてくれたんだもん!
今日は私が送るっ」

樹は目を大きく見開くと…吹き出した。

「ブハッ。ほんっと、沙和っておもしろいな」
「え?」
「俺が沙和を送りたいんだよ」
「でも…」
「つーか、こんな可愛いやつになにかあったら俺、嫌だ。
俺、仮にも彼氏だし。大事な彼女送るの普通だから。
黙って送られろ」
「ありがとう…」

私たちは手を繋ぎ、歩き出した。
心のもやもやは、
綺麗に消えていた。

樹、ありがとう。

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