暴走族の秘密の姫君


「じゃあ、これで」


足早に時計塔の裏を立ち去ろうとする。


「なぁ、待てよ」


後ろから声をかけられた。


私はとっさに後ろを振り向く。


「お前…俺たちが誰か知ってんのか?」


…何こいつ…自意識過剰?


私が名前も知らない人たちのことを知って訳ないじゃん…。



「…知らない。知るわけないでしょ…」


咄嗟にそっけなく答える。


「へぇー…命知らずな子もいるんだねぇ、うちの学校に。俺ら、皐月っていうとこの幹部なの。覚えといて」



という声が聞こえてきた。


…命知らず?


「何それ。あんたたちがどれだけえらいのかは知らないけど…もう放っておいてよ。



じゃあ、私、行くから」


今度は誰かに声をかけられる前に時計塔裏から出ることができた。


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