私は猫
「じゃあ、また来るぜィ」
それから鷹さんは仕入れがあるから、と
日付が変わると共に帰っていった。
お店の外までお見送りをして、花壇を少し直していると、
私は声をかけられた。
「あれ、…日向…」
「えっ」
振り返ると、そこには私の見知った顔があった。
「あ……榛原くん」
高校の同級生である榛原京介
どうしてこんな所に……
「やだな、よそよそしい。これでも元恋人なんだしさ」
「…うん。ごめんね、京」
確かに私たちは付き合っていた。
でも今そのことは話したくないし、ここで働いていることなんて、一番京には知られたくなかった。
私は突然の再会にどうしていいか分からず、ただお店の看板を眺めていた。
「それになにその格好、もしかしてここで働いてるわけ」
「…うん、そうだよ」
探るように上から下までジロジロ見られて
私は着物の袖を少しいじった。
「そうだよって……まだ未成ね…」
「ダメ!言わないで……秘密なの」
「日向」
ヒナではなく、日向と呼ばれる。
なんでこんなとこに京がいるの…。
「じゃあ…せっかくだからお店入れてよ」
「えー…」
「いいでしょ、久しぶりに会えたんだから。日向と話したい」
「……うん」
私は小さくため息をついて、京をお店に入れた。
…嫌な予感しかしない。
私の背後はそう感じ取っていた。