私は猫



***



隣ですやすやと眠る京。私は京の長い前髪を指でかきわけた。



いつもの憎たらしさは消えて、ちょっとだけ可愛く見える。



あれから私は京に抱かれた。



思い出しただけでまた熱くなってくる…。



でも、これでよかったのか分からないよ。



「なにしてんのさ日向」



じっと顔を覗き込んでいると、京と目が合った。



「起こしてごめん」



「いいよ、こっちおいで」



そう言って京は私を抱き寄せて、自分の腕を枕にしてくれた。



「日向じゃなきゃイヤだよ」



京は私の髪を指に絡めて遊びはじめた。



私は自分が何に迷い何を悩んでいるのかも分からなかった。



「あ…」



南さんのこと。



「どうしたの」



京が眉をひそめる。



「ううん、何でもない」



私は被りを振った。



なぜだか、京には知られてほしくなかった。



「…高3のとき」



京が話しだした。



「日向に振られてさ、1ヶ月くらいかな…かなり引きずったんだ」



ぱっと顔を上げる。京の真面目な目にぶつかった。



「受験勉強はしたよ。でも楽しくなかった。今日まではね」



「どうして」



「大学入ってからは余計に分からなかった。自分のしたいことやってるのに、どこか空っぽでさ…やっと分かったんだ」



京は私を引き寄せて向き合わせた。



「日向がいないからだったんだ」



「…京」



私は京から目が離せなかった。それ以上聞きたくないのと、そうでないのとで、頭のなかがごちゃごちゃしていた。



「日向はずっとここにいるつもり」



「分からない…そういうことは」



「僕が日向を幸せにする」



京ははっきりとそう言った。

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