寂しがりやの猫
初詣
実家で10日ほど ゆっくりと過ごし、マンションに戻った。

無造作に放り込まれたダイレクトメールをゴミ箱に捨てて、年賀状の束をゆっくりと眺めた。

― あ、ユキちゃんから来てる。私、出したかな?

千里ちゃん、こないだの社員旅行の写真使ってるよ、他にどこにも行けなかったのかなあ…


部長、また水墨画で一枚ずつ描いてる、よくそんな暇あるよなあ…


何枚かを見たあと、一枚の年賀状を見て 私は ピタリと動きを留めた。


― 田村 一郎 …

『明けまして おめでとうございます。昨年は 大変お世話になりました。

中河原さんのお陰で 俺も少しは社会人として やっていく自信がつきました。

また 機会があれば会いましょう』


当たり障りのない社交辞令でも、それにすがり付きたいような気持ちだった。

―機会があれば…

機会は作るもんなんじゃない?


私は 携帯を鞄から取り出した。
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